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脂質異常症(高脂血症)

脂質異常症について

脂質異常症は、血液中の脂質(中性脂肪、HDL、LDL)の量が正常値を超える状態を指します。正常値とは中性脂肪(TG)150未満、HDL40未満、LDL140未満のことです。脂質異常症は、高脂血症とも呼ばれ、動脈硬化や冠状動脈疾患、脳卒中などの心血管疾患のリスクを高めることが分かっています。

脂質異常症の治療には、まず生活習慣の改善が行われます。健康的な食生活や適度な運動、喫煙や飲酒の制限などが含まれます。これらの対策だけでも、脂質異常症の改善につながることがあります。

しかし、生活習慣改善だけでは改善しない場合は、薬物療法が必要となる場合があります。薬物療法には、スタチン剤、フィブラート剤、ニコチン酸剤、胆酸吸着剤などがあります。薬の種類によっては、副作用が出ることがあるため、適切な医師の指導の下で治療を行うことが重要です。

当院の治療方針

 ①健診などで脂質異常を指摘された場合には、まずは問診のうえ再度採血を行います。冠動脈疾患の既往や家族歴、皮膚のコレステロール沈着(黄色腫)などがある場合には家族性高コレステロール血症となるため、LDLはしっかりと下げていく必要があります(LDL<100)。また時々、甲状腺機能低下症によるLDL高値の方もいるため一緒に甲状腺機能も確認します。

 ②当院での採血でもやはり脂質異常が確認できる場合には、まずは生活習慣の改善を図ります。数か月の経過でも改善がない場合には内服治療を開始します。通常はまず下記のスタチンやEPA製剤を使用していきます。

 ③内服治療中も定期的に採血を行っていき、目標値よりも下がってきた場合や安定している場合は内服を減らせないか検討します。

(※週刊誌でよく見る“一度始めたら止められない”というのは嘘です。生活習慣が改善したり減量によって内服が不要になる方は大勢います。)

 

治療方法
 ①生活習慣の改善 

  1. 脂質摂取改善:LDLは飽和脂肪酸の摂取量と大きく関連します。飽和脂肪酸(肉の脂身、バター、パームヤシ油)やトランス脂肪酸(菓子パン、スナック菓子、マーガリン、マヨネーズ)の摂りすぎは動脈硬化を加速させます。不飽和脂肪酸(サラダ油や魚の油)を摂取するようにしましょう。また、できれば鶏卵、魚卵などはコレステロール多く含まれるため食べ過ぎないように注意しましょう。

  2. カロリー摂取制限:中性脂肪は“脂肪”という名前がついていますが、糖質の摂りすぎが主な原因です。基本的には1日摂取カロリーは身長(m)×身長(m)×25×25を超えないように注意しましょう。
  3. アルコール制限:飲酒は中性脂肪を増加させるため過剰摂取は控えましょう。1日の適正量は男性:25g以下、女性:20g以下です。アルコール量(g)=飲酒量(ml)×濃度×0.8で考えます。(以前はお酒は“百薬の長”と言われていることもありましたが、現在は基本的に飲まなければ飲まない方がよいということが分かっていますので、なるべく少ないに越したことはありません。)

  4. 食物繊維摂取:野菜、キノコ、海藻、豆類を多くとりましょう。食物繊維はコレステロールや中性脂肪の吸収を妨げる働きがあります。“食事の最初”に食べるようにしましょう。

  5. 魚介類の摂取:DHAやEPAなどのω3脂肪酸(多価不飽和脂肪酸)が含まれる魚介類は、中性脂肪を下げる効果があります。週に2~3回の摂取を心がけましょう。

上記のポイントを意識して、食事をバランスよく摂取することが高血圧の改善につながります。また、アルコールの適度な制限、喫煙、適度な運動も合わせて行うことが大切です。ただし、高血圧の陰に病気が隠れている二次性高血圧のこともありますので、まずはご相談ください。

 ②薬物療法

・スタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬):最もよく使われる標準的な薬です。肝臓でのコレステロールの合成を抑制し、LDLを減少させることで、心血管イベントのリスクを減少させます。

スタンダードスタチン(メバロチン、リポバス、ローコール)、ストロングスタチン(クレストール、リバロ、リピトール)の2つに分かれており、前者は15%程度、後者は30%程度のLDL減少効果が期待されます。

・小腸コレステロールトランスポーター阻害薬(ゼチーア):小腸からのコレステロール吸収を抑えてLDLを低下させます。

・フィブラート(ベザトール、リピディル):フィブラートは、中性脂肪(TG)を減少させ、HDLを増加させる薬物です。高TG血症の管理に効果的であり、時にはスタチンと併用されることもあります。

・選択的PPARαモジュレーター(パルモディア):フィブラートの仲間で同様の効果を示しますが、副作用が少なく、スタチンとの併用も行いやすい薬です。

・EPA製剤(エパデール、ロトリガ):青魚によく含まれている多価不飽和脂肪酸です。中性脂肪を下げる効果があります。

・陰イオン交換樹脂(コレバイン):腸管内でのコレステロールを吸着し、排泄することでコレステロールを減少させる薬物です。主にスタチンやフィブラートに対する併用療法として使用されることがあります。

・ニコチン酸誘導体(ユベラ):中性脂肪の産生を抑えたり、コレステロールから胆汁酸への変換を促す作用があります。中性脂肪、LDLを減少させ、HDLを増加させます。

・PCSK9阻害剤(レパーサ):PCSK9阻害剤は、LDLを減少させる新しいタイプの薬物です。一般的に高リスクの患者やスタチンに対する耐性がある患者に使用されます。

脂質異常症は特に自覚症状がないため健康診断での指摘を受けても放置されやすい疾患です。心筋梗塞や脳梗塞になってから始めるのではなく、今日から治療を開始していきましょう。

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